アメリカの大学院の特徴

Last modified on Saturday December 16, 2017


学部卒から博士課程へ入学できる

アメリカの大学院のプログラムの多く(特にEngineering系)は,学部卒からの博士課程への入学を認めています.つまり,学部を卒業した時点で博士号を取ることを決めているのであれば,入学時からPh.D. Studentとして認められます.修士課程を修了してから博士号を得る場合と比べて,博士課程へ直接入学した場合,平均して1年程度早くプログラムを修了することができるようです.もちろん,プログラムによっては博士課程への入学に修士の学位を必須としていることもあります.

修士課程では研究をする必要がない

研究室に入って研究をすることもできますが,私の大学では研究は修士課程の修了要件には含まれていません.つまり,修了に必要となる単位数だけ授業を取ることができれば,研究をすることなく,修士号を得ることができます.アメリカでは,修士号は主に専門的な職につくために必要な学位,博士号は研究者や大学教授になるための学位と考えられていることが大きな理由のようです.もちろん,希望すれば修士課程でも研究をすることができます.

研究室の規模が比較的小さい

これは私のいた高専の研究室に似ているような気がします.基本的に教授であれ,准教授であれ,それぞれが研究室を持っています.日本の大学に多く見られるような,教授をトップとして助教授や助手などがその下に位置するというようなピラミッド型のシステムは,アメリカではあまり見られません.また各研究室は独立しており,研究やRA(後述)の予算などは研究室単位で決められています.

教授との距離が近い

アメリカの研究室で強く感じるのは教授との距離が非常に近く感じるということです.あ,教授の部屋が隣にあるとかいう物理的な話ではありませんよ,精神的な距離です.学生ー教授といった関係よりは,むしろ研究仲間という感じの方が近い気がします.それもそのはず,研究の成果を出すという目標は同じですし,さらに大学院の学生はRAとして教授と同じように研究を進めることによって給料をもらっています.さらに学生によってはTAによって学部生を指導していますから,立場としては教授も大学院生も似ているのかもしれません.

とここまで書いていながら気がついたのですが,英語と日本語の違いというのも距離感の違いに影響しているように思います.いわゆる敬語というものが英語には存在しないため,友達と話す時も教授に話しかける時も,基本的には同じような口調になります(もちろん丁寧な言い方というのはありますが).これも上下関係をあまり感じない一つの理由かもしれません.

学費の補助・免除が充実している

私のいるDepartmentでは,8割以上の学生が何らかの学費・生活費の支援を受けています.大学院で最も一般的な学費の補助はResearch Assistantship (RA)と呼ばれるもので,名前の通り研究に携わることで学費や生活費の補助を受けることができます.また学生によっては,学部のクラスのTeaching Assistant (TA)を担当して学部生の指導をしている場合もあります.また大学以外からの支援としては,国や企業などによる奨学金があります.このように支援が非常に充実しているため,学費を個人の資金で全額支払っている学生はとても少ないのです.

試験が多い&たいへん(Ph.D.)

アメリカの多くの大学院ではPh.D.取得までに,Qualifying Exam, Preliminary Exam, そしてDefenceという3つの大きな試験があります.私のいるDepartmentでは,Qualifying Examは研究を始めるにあたって必要となる知識が身についているかを確認することを目的としたものであり,Ph.D.の1年目が終了した時点で試験を受ける必要があります.これに落ちてしまうと博士課程に残ることができなくなってしまうため,数ヶ月をかけて試験に向けた勉強をします.次にやってくるPreliminary Examでは自身の研究に関する質問に答えます.そして研究成果をまとめて発表する場でもあるDefenceに合格すると,晴れて学位を取得することができます.なお上に挙げた3つの試験はあくまでPh.D.を取得するための試験であり,このほかに通常科目の中間試験や期末試験をこなしていく必要があります.

授業1コマが短い(ちょっと余談)

授業によって1コマの長さが多少異なりますが,その多くが50分,あるいは75分です.高専や日本の大学は90分が普通ですので,50分の授業というのは非常に短く感じます.ただし授業の進むスピードが非常に早いため,居眠りなんかをしている学生は(少なくとも大学院では)見たことがありません.こちらの教授たち曰く,人間が集中できるのはせいぜい1時間程度なので,授業時間は50分くらいが良いそうです.ただし50分の授業は週3コマ,75分の授業は週2コマありますから,合計の授業時間はそれほど短くはありません.